カップ:直径78mm 高57mm ソーサー:直径137mm 高22mm
この半年間で生まれたハラダマホの新作のうち、四方大皿『古代日本』とパスタ皿『ワニの庭』、そしてこのカップ&ソーサー『ウィーン発』はデザイン要素が似通っているせいか、一族のような雰囲気があります。そのことを作者に尋ねると「最初に思いついたのが古代日本、その要素や色をアレンジしたのがワニの庭。最後にウィーン発を作った」とのことでした。全部アイテムを変えてくるところがハラダさんらしいと思いました。
ウィーンが美術工芸の世界で注目されたのは19世紀末から20世紀初頭にかけて、グスタフ・クリムトを主唱者とする『ウィーン分離派』の活躍でしょう。特に絵画部門は御大のクリムトをはじめ、エゴン・シーレやオスカー・ココシュカなど独特の画風が現代の感性にも合うのか、『世紀末』というと今でも彼らの絵が引用されるほどポピュラーな存在です。
工芸部門はウィーン工房を中心に、建築から家具内装、日用品の製作や本の装丁まで手掛けました。このあたり工芸史に詳しい方ならお気づきでしょうが、モリスの『アーツアンドクラフツ運動』の影響が大です。工房のパトロンが破産したり、次世代のバウハウス・デザインに追いやられたり、となかなか苦労をしています。いま見ると幾何学的な装飾がアールデコほど強烈でなく、モダンと上品さを兼備して日本人好みじゃないか。と思えるのですが。という目で見ると『ウィーン発』というネーミング、このカップソーサーに合ってますね!