口径73mm 高100mm
猪目文(いのめもん)は古くから伝承される古典柄で、ハート形のユニットはイノシシの目を図案化したものといわれています。元々は神社や仏閣などの扉に用いられた装飾で、厄除け魔封じの効能があると信じられてきました。目が魔除けになるというは古今東西共通した認識で、トルコの『ナザールボンジュー』という目玉おやじみたいなガラスのアクセサリーは邪気を払うと信じられており、今ではトルコ土産の定番になっています。
猪目文は幸運な文様として、刀剣や武具などの装飾にも多く使われています。昔の建築物や工芸品の中からハート形の装飾を見つけることを誰もが経験しているでしょうが、それが猪目文です(「あら刀の鐺にハートなんてお洒落ねえ」とか言わないでください)。
そして浜野まゆみ描く猪目文総柄の筒湯呑。飲み口の中側から高台まで猪目文で埋まっています。まるで経文の迫力です、この凄さは実物ならでは。申し訳ないけれど画像では再現できません(やきものオンチの姉が「写真だと実物と全然違っちゃうねえ」と言ってました……)。数年前に浜野さんが一枚だけ作った(一枚しか完品が取れなかったそうです……)独鈷を連想させる青磁皿を思い出しました。あれも凄かったけれど今度の猪目文も凄い、『凄い』の取締りというやつです。浜野さんに話を聞いたら、一日一個描けたらいいほうで、そのあとフラフラだそうです。この凄さは、何度も言いますが、実物を手にしたあなただけが体感できる衝撃です。猪目文のパワーって本物だな、と僕も思いました。